interview

開発者インタビュー

新しい弥彦名物「やひこ開運だしカレー」について、開発者の3人にお話を伺いました。

参加者

  • スパイス料理
    研究家

    一条もんこさん

  • 四季の宿 みのや
    社長

    白崎純也さん

  • 弥彦温泉
    観光旅館組合組合長
    (お宿 だいろく社長)

    神田雅仁さん

やひこ開運だしカレー開発のきっかけ

「やひこ開運だしカレー」の開発企画がスタートしたのは2019年のことでした。そのきっかけを教えてください。

白崎:
「実は弥彦はカレーの食文化と関わりがありまして。いちばん有名なところだと、成沢商店のカレー豆というお菓子が昔から人気です。また、食堂などでは、カレーライスやカレーラーメンを出していたり、焼き鳥屋さんでは、カレー味の半身揚げを提供していたりと、カレーには少なからず縁があると感じていました」

白崎:
「直接のきっかけとなったのは、イタリア軒(※)さんとの関わりでした。弥彦にはかつて、イタリア軒さんの弥彦支店というのがありました。そんなところからも『これはカレーにご縁があるな』と思っていたんです。イタリア軒の支配人と総料理長にアポイントを取りまして、神田組合長と一緒にお話を伺いに行ってきたんです。当時提供していたチキンカレーのレシピが残っていてというお話を伺って。そこで「うちも一条もんこさんからカレーの監修をしていただいているんですよ」というお話があったんです。それをきっかけに、一条もんこさんにお声がけをさせていただいたというところです」

(※)新潟市の「ホテルイタリア軒」。日本で最初期に洋食を提供したとされる。一条さんは同ホテルのカレーフェアでの監修などを担当

白崎:
「一条さんは新潟のご出身であり、イタリア軒さんのカレーをはじめ、新潟県内でも多くのカレーをプロデュースされています。これはコラボをして何かやらない手はないだろうという話になりまして、神田組合長に相談をさせていただいたのがスタートでした。ありがたいことに一条さんにはご快諾いただき、企画がスタートしたんです」

一条:
「弥彦って、お米も野菜も海産物までも採れるし、食材がとても豊富なんですね。しかも、なんでも美味しいんです。いわゆるご当地カレーは、その土地の有名な食材を入れて開発することが多いのですが、弥彦の場合は、どの食材も本当に美味しくて、選ぶのが難しかったんです。そこで、まずは『弥彦』というワードからイメージされる『開運』要素を出していこうと考えました」

白崎:
「一条さん、神田組合長、私の3者で企画会議をスタートしました。そこで、弥彦で親しまれている『御日供祭(おにっくさい)』で捧げるご神饌というヒントが出てきたんです」

一条:
「神社といえば、『神様』とか『運気を上げる』とかあると思うんですけど、それにあやかって『開運』というかたちでカレーを作ってみてはどうかなと。やひこ開運だしカレーには17種類のスパイスを使用しているのですが、運気を上げてくれるとされるスパイスを多く使用しました。『このカレーを食べたら、何かいいことあるかも』という開運要素も加えてみたら面白いかなと思ったんです」

神田:
「神社には『ご神饌』というお供物があります。弥彦神社ではお米、昆布、鰹節、ワカメの乾物を奉納します。これらを弥彦の名物として活用できないものだろうか?という話は実は前々から出ていたんです。そこで今回の企画が立ち上がり、カレーになんとか活用できないものかと。次第に昆布と鰹節の出汁と、もんこさんの秘伝のスパイスを混ぜるというアイデアに繋がっていきました」

白崎:
「何度も検討会を重ね、最終的に『弥彦に由来する出汁の効いたスパイスカレーをつくろう』ということになりました。そこに行き着くまでは、弥彦の農家の方に参加していただき、何度もアイデア出しをしていきました。いろいろと案が出たのですが、最終的にシンプルなカレーをリリースしようかという流れになり『出汁×スパイス』のカレーを開発することになったんです」

出汁感と、スパイス。 絶妙な組み合わせ

白崎:
「ただ、出汁とスパイスとを掛け合わせると、どうしてもやっぱりスパイスが勝ってしまう。その中で、いかに『出汁感』を出していくか、というところには、初期段階からこだわっていました。もんこさんには非常にご苦労をかけたと思うんですけど、いかがですか」

一条:
「出汁を使ったカレーというと、どうしても『お蕎麦屋さんのカレー』をイメージされる方が多いと思うんです。でも、今回のカレーに関しては、実はインドカレーに寄せたカレーというか、日本のカレーのイメージはほとんどないような形になっていると思います」

一条:
「使っている出汁は和風なのですが、たとえば玉ねぎの炒め方がインドっぽかったりして、食べると、スパイスの風味が感じられるようにしました。『出汁の旨みもしっかり味わえて、スパイスも効いている』というというギャップも魅力なんじゃないかなと思います」

一条:
「また、今回の企画では、お店などで提供する出汁カレーとともに、レトルトカレーも開発しました。レトルトにしても出汁の旨みを消さないようにするというところが、今回の開発でもっとも苦労したところかもしれません」

そのままが一番おいしい。レトルトカレー

ー弥彦村内の店舗での提供に加え、レトルトカレーも販売が開始されました。レトルトならではの楽しみ方はありますか。

一条:
「このカレーは味が完成されていると思いますので、レトルトの場合、味変を楽しむというよりは、そのままの状態で楽しんでいただくのが最もおすすめです。辛みを足したい方は、七味唐辛子を加えてみてもいいと思います。または、たとえばシナモンやナツメグなどを加えてみてもスパイシーで香りが増しておすすめです」

一条:
「湯煎の際のちょっとしたテクニックなのですが、お湯で温める際に、何度か上下左右に振っていただくと、脂が馴染んでより一層、美味しくなります。また、うどんやお蕎麦に絡めても美味しくいただけると思います」

弥彦を「カレーの聖地」に

ー弥彦開運カレーで、弥彦を今後どのように盛り上げていきたいですか。

神田:
「冒頭でも白崎さんからお話がありましたが、弥彦駅前にはイタリア軒さんの支店がありました。うちも旅館を始める前、昭和初期の頃は私の祖父の代には食堂をやっていまして、カレーを出していたんです。その頃は、カレーどころかラーメンさえもエスニック料理に分類されるような(笑)そんな時代の中で、日本の中でも先駆けて洋食が食べられていたという歴史があることは、とても面白いと感じています」

神田:
「戦前までの新潟県は、東京よりも人口が多く、一時期は日本一の人口を誇りました。弥彦神社はその新潟県の一ノ宮ということで、今以上に多くの参拝客が訪れる場所だったのです。その中で『神社参りの帰りにイタリア軒でハイカラな洋食を食べて帰ろう』いう文化があったわけです。そうした歴史を大切にし、思いを馳せながら、盛り上げて行けたらと思います」

白崎:
「カレーを通じて、弥彦をより楽しめる街にしていけたらと思います。ゆくゆくは、弥彦を『カレーの聖地』にしたいですね。弥彦という地域全体で、やひこ開運だしカレーを盛り上げていけたら。また、いつか弥彦の地でカレーフェスを開催したりできたら嬉しいですね。新潟市を中心にカレー専門店も増えていますし、新潟のカレー文化は盛り上がりを見せていますから」

一条:
「新潟市がカレールー購入額が全国一位になったこと(※)は、全国ニュースでも報じられたりしていました。新潟には(カレーを発信する)タイミング、大きなチャンスがきていると思っています」

(※)参照:総務省統計局(2019-2021)https://www.stat.go.jp/data/kakei/5.html

白崎:
「もんこさんの野望でもある『新潟をカレー県に!』という壮大なスケールのプロジェクトもありますから!」

一条:
「弥彦で新潟のカレーを集めたフェスができたらいいですね!私、個人的にも弥彦の環境がすごい好きなんです。自然豊かで、美味しい食材も豊富ですし、温泉街でカレーというのは人を集めやすいフレーズですし、カレーフェスができたら素晴らしいことだと思います」

一条:
「また、逆に東京にもやひこ開運だしカレーを持っていきたいですよね。関東各地のイベントで提供したいです。今の私の野望はそれですね。全国に広めるための東京進出!みたいな。その架け橋になれればと思います。カレーを食べに、弥彦に行こう!という風に全国の皆さんに思っていただけたらと思っています」

本日はありがとうございました(了)